これぞエンターテイメント!『86-エイティシックス-』が冗談抜きで面白い‼︎

86-エイティシックス-

約6年ぶりにライトノベルを買った。学生時代は、『とあるシリーズ』や『俺妹』、『境界線上のホライズン』など様々なライトノベルを貪るように読んだ。けれど、学生時代の終焉とともにライトノベルから自然と足が遠のいていった。

そんな折だった。たまたま、海外ドラマの新シーズンが始まるまでの「時間つぶし」に、ひょんなことから観始めた『ソードアートオンライン』──ハマった。ハマりました。どハマりですわ、もう。

 

いや、もうめちゃくちゃ面白いし。3シーズン一気に観たし。しかも、原作小説も一気に買ったし……

 

そして、その『SAO』の巻末に入っていた折り込み広告の中で見つけたのが、この『86-エイティシックス-』だった。表紙の1/3くらいがタイトルで埋めつくされる近年のライトノベルの中でも、極端なほどシンプルなタイトルにどことなく惹かれた。

 

で、何気なしに購入してみたのだけれど、これがまた面白い。

めちゃくちゃ面白い。どれくらい面白いかって言うと、『マブラヴ オルタネイティブ』の悽愴っぷりに、『装甲悪鬼村正』の硬さをぶち込んだ感じ。つまり、私の琴線に触れまくり、刺さりまくりでした。

 

あと、表紙のイラストでヒロインが銀髪という時点で確信しました──「こいつぁ絶対に面白いはずだ」と。銀髪ヒロインは正義なんですよ‼︎ これぞ世界の理にして、歴史の真髄。

 

つまりだな……銀髪ヒロインかわいいじゃないっすか‼︎

 

従来のライトノベルを覆す面白さ

86-エイティシックス-

(C)2017 ASATO ASATO / KADOKAWA CORPORATION

あらすじ

星歴2139年。ギアーテ帝国が、世界初の完全自立無尽戦闘機械「レギオン」の開発に成功する。そして、周辺諸国へ向けてあまねく宣戦布告。主人公シン(パーソナルネーム『アンダーテイカー』)は、サンマグノリア共和国の区画外で、日夜「レギオン」と戦っている。

サンマグノリア共和国。一見すると、迫りくる「レギオン」の脅威を退け、泰平を維持しているかのように見えるユートピア。しかし、ところがどっこい。その実相は、「まさに外道」としか言えないほどの鬼畜っぷり。

 

まず、共和国85区画の外、つまり本来存在していないはずの86区で暮らす人々を「エイティシックス」と蔑称し、家畜同然に扱っているということ。共和国政府によって迫害された有色種「コロラータ」は、およそ動物以下の扱いを受けて人権を踏みにじられている。

あまつさえ、「レギオン」に対抗するべく、サンマグノリア共和国が開発した同型の戦闘機械「ジャガーノート」は、性能的にも劣後をとるわ、紙装甲で1発喰らったらオシャカになるわという「無理ゲー」仕様。

 

そのうえ、「ジャガーノート」の存在は、共和国市民には「無人機」として認知されている。「有人搭乗式無人機:ジャガーノート」──この矛盾を孕んだ名前が示すのは、エイティシックスに対する塵芥のような扱い。共和国は、エイティシックスを迫害しておきながら、彼らに戦闘の一切を押しつけ自分たちはのうのうと壁の内側で安寧を享受しているという外道っぷり。

 

もう一度言おう。まさに外道

 

いやぁ、最初に読んだときは作者さんのドSっぷりに吹き出しました。この容赦のない感じ、まさに戦場じゃありませんか。そう、言うなれば、『マブラヴ』で全編通してひしひしと伝わってくる冷厳な空気感。いっときたりとも戒心を怠れない、ピンと張り詰めた空気感。そこに、性能的に不利な条件下でのメカ同士の闘いとくれば、これで燃えない(萌えない)わけがないじゃないか!

 

それから、「首なし骸骨」が目印のスピアヘッド戦隊 隊長シンのキャラクターも良いんです。カッコいいんですよ、シン君。「死者の声」を聴き分ける異能を持ち、「レギオン」の所在が把握できるという特殊技能付き。尋常ならざる戦闘能力とも相まって、周囲からは「死神」とあだ名される正真正銘のエースパイロット。

 

サンマグノリア共和国には、実際的に「レギオン」と交戦するプロセッサー《情報処理装置》──つまり、本来無人であるはずのジャガーノートに搭乗するパイロットのこと──と、通信を行って部隊を指揮するハンドラー《指揮管制官》が存在する。

プロセッサーとハンドラーは、お互いに「パラレイド《知覚同調》」と呼ばれる通信規格を用いて通信を行う。

 

でもって、ヒロインがこの通信オペ子的なハンドラーしかも銀髪ときたら、こりゃあもう、たまりませんわな、はい。

 

イラストだとより顕著だけど、銀髪と紺碧の制服という組み合わせがまた美しい。はやくアニメ化してくれないかなぁと、切に願う今日この頃。

 

あ、話が逸れました。

 

でね、この「無理ゲー」設定だけでもライトノベルのメインストリームから外れた異色作であることは分かるんだけれども、『エイティシックス』がすごいのは、そこに濃厚すぎる「機械愛《メカニック・愛》」と、虚淵玄さん並みの硬派な文章が組み合わさってるところ。

 

高村薫さんとか、虚淵玄さんとか、奈須きのこさんあたりのガチガチの文体が好きな私には、垂涎モノでございます。

 

この硬さ、もはやニトロプラス

86-エイティシックス-

(C)2017 ASATO ASATO / KADOKAWA CORPORATION

ライトノベルの文体といえば、硬すぎず、だからといって無造作ではない均衡のとれた文体がセオリーだと思う(まぁライトノベルに限らず、一般文芸であってもエンターテイメントの体をとった作品であれば)

つまり、ストレスフリーであまり肩に力を込めずに読むことのできる。だが、技巧の形跡すら窺わせない文体の裏側には、そのじつ、とてつもない技巧が組み込まれている──私の大好きな冲方丁さんや伊藤計畫さんの文体は、まさにこの典型。スラスラと読めるし、情景もありありと浮かび上がってくる、だからといって誰にでも書けるのかと言われると、決して容易には真似できない。このシンプルゆえの高度なテクニックこそ、エンターテイメント作品を書いてらっしゃる作家さんのお家芸だと思う。

 

で、何をグダグダとのたくっているのかと言うと、中にはゴリゴリの硬い文体を用いる作家さんもいらっしゃるわけで。
言わずと知れた大御所、TYPE-MOONの奈須きのこさんの文体も、およそノベルゲームというよりはちょっと大人なファンタジー文庫レーベルあたりから出版されていそうな硬さを放っている(実際、同人から商業へと移行なさってからは、メフィストで出版しているし)

硬い文体と言ってまず最初に想起されるのが、『ニトロプラス』の奈良原一鉄さん。でもって、同じく『ニトロプラス』の虚淵玄さん。

 

お二人とも、文章中に使われる語彙が難しい漢字多すぎて、初めて読んだ時は辞書アプリを手元に置いてゲームプレイした記憶がある。

 

でね、安里アサトさんの文体も、これまた硬くてカッコいいんですよ。言うなれば、ヘヴィメタル──『ハロウィン』とか『アイアンメイデン』と言うよりはむしろ、『パンテラ』や『スレイヤー』のようなゴリゴリの重厚さ。

 

重なる青い月光と夜闇の紗を切り裂いて数発の砲弾が飛来。異様なほどの正確さで〈レギオン〉隊列上方に到達するや炸裂し、内包する爆弾《クラスター》の驟雨を叩きつける。

『86-エイティシックス- Ep.2』より

 

あぁ、カッコいい……///
このゴリゴリな文体と、容赦のない戦場の空気感が合わさって、とてつもなくグルーヴィーな世界観を醸し出す。目尻のことを「まなじり」って言うらしい。2巻目で出てきて思わずググったわ。

 

パッとページを捲って、見開き全体を見るじゃないですか。そしたら、あまりにもルビ多すぎてパッと見た感じものすごい「圧」を感じるんですよね。でもね、私みたいな「ルビ大好き人間」にとっては、それすらも心地良いんです。だって、カッコいいじゃないですか。

 

斥候型《アーマイゼ》、近接猟兵型《グラウヴォルフ》、戦車型《レーヴェ》といった具合に。

個人的に気に入っているのは、阻電撹乱型《アインタークスフリーゲ》──もはや、カッコいい通り越して渋い

 

圧倒的重厚感を放つメカニックアクション

 

86-エイティシックス-

(C)2017 ASATO ASATO / KADOKAWA CORPORATION

巻末のあと書きで「ガーターベルトのエロ可愛さ」について、滔々と語ってらっしゃった安里アサトさん。かと思いきや、2巻目のあと書きでは「陸上戦におけるパイロットスーツは不要説」を意気揚々と語っている。

こだけでも十分に伝わってくるように、作者さんの「ロボットもの」とりわけ「メカニック」な要素に対する熱量が半端ない。ジャガーノートに随伴して、弾薬やエネルギーパックの供給を行う支援機械「スカベンジャー」なんて、もはやペット感出てるし。

 

それから、「紙装甲」のジャガーノートに敢えてワイヤーアンカーを装備させて、しかも高周波ブレードで白兵戦させる胸熱展開。ロボット系アクションゲームで、素早さと攻撃力に全振りしてひたすらに白兵武器で殴るスタイルの私にとって、これほどテンションあがるシチュエーションはそうそうあったもんじゃない。

 

シンたちが闘う相手、「レギオン」の種類も多岐にわたっていて、細分化された兵装タイプは想像力を掻き立てられること間違いなし。

 

そして、『86-エイティシックス-』の見所である大迫力の戦闘シーン。先述の、硬派な文体と相まって、炸裂した榴弾の爆風が感じられるほどに臨場感満載。いや、これはユニバのアトラクション超えたで…… 

 

戦闘シーンの描写もさることながら、シン君の向こう見ずな戦闘スタイルも迫力満点だ。あっちからこっちへ、ワイヤーアンカーで颯爽と動き回りながら、高周波ブレードで「レギオン」の急所を掻っ捌く──頭の中にありありと映像が浮かぶだけに、アニメ化が待ち遠しい。映像化したら、絶対カッコいいんだろうなぁとアレコレと妄想してしまう今日この頃。

 

また、迫力満点の戦闘シーンで熱くなったと思ったら、ヒロイン:レーナちゃんとスピアヘッド戦隊の距離感も次第に変化していって、その変遷を辿るドラマパートも面白い。清廉潔白、ひたすら愚直なレーナ嬢と、どこか飄々としたシン君の隔意が次第に縮まっていく様子から始終目が離せない。

 

次第に明らかになるレーナとシンの意外な繋がり──そして、驚愕のラストシーン。本当に面白かった1冊。まだ読んでない不幸な人は、今すぐ読むべし‼︎

 

ライトノベルとヘヴィノベルの狭間で

 

86-エイティシックス-

(C)2017 ASATO ASATO / KADOKAWA CORPORATION

硬派な文体に、シリアスな描写──巷では、ライトノベル畑に咲いたこれらの亜種を「ヘヴィノベル」と称して隔離する。
参考 『86』著者 安里アサトのツイートから始まる「ヘビーノベル芸」談義Togetter 安里アサトさんのTwitterを拝見していると、何やら面白い投稿が流れてきた。サンマグノリア共和国の「まさに外道」設定やら、「紙装甲」のジャガーノート。さらには、性能的・物量的に圧倒的な「レギオン」の軍勢。これらの設定からも、安里アサトさんの「ドS」っぷりは、ある程度想像できた。

 

で、面白いのが作者さんと世間一般の「ライト基準」の齟齬。

 

そもそも、「ライトノベル」のライトって何だろう。

いや、そもそも、何をもってして「ライトノベル」と定義するのか。

 

こういったサブカル情報は、Wikipediaよりもニコニコ大百科の方が信頼できる──というわけで、調べてみた。

 

ライトノベルとは、小説の分類分けの一つである。しかしそれぞれの作品で特徴が違うため言葉による全体の定義付けが難しい。
主にライトノベルは中高生や若年層向けに軽妙な文体でストーリーが描かれており、通常の小説と比べ挿絵が随所に入り、値段も500~600円程度と比較的手頃な文庫本形式であり、表紙がアニメ絵の美少女など特徴的なものが多い。

ニコニコ大百科『ライトノベル』より引用

 

なるほど、わからん。
つまり、現在市場に流通しているライトノベルが「ライトノベル」である、という事くらいしか言えないことがわかる。(そんなもん分かっとるわ‼︎)

 

では、ヘヴィノベルとは何ぞや。イメージ的には、「ライトノベル」の対局──つまり、硬派な文体で扱う題材もシリアス、と相成る。

「ライトノベル」が明確に定義できない以上、その対局である「ヘヴィノベル」の定義も曖昧になって当然だ。これはもう、各人の心証に委ねるしかないのではないか。

 

その人が「これはライトノベルだわ」と言えばそうだし、「いやいや、これはヘヴィノベルだって、これは」と言えばそうなる。つまり、この分類形式はあくまでも個人の主観の域を出ることはない

これって、ヘヴィメタルのジャンル分けと同じで、私が「Phinehasはメロディック・メタルコアバンドだよね」と思っていても、Wikipedia的には「小僧、それは違うぞ。Phinehasはクリスチャン・メタルコア・バンドだ」となるわけだ。

 

ヘヴィメタルのジャンル分けも、各ジャンルが有機的に連結しすぎて、もはや分類としての機能を失いつつある。それと同じ現象が、「ライトノベル」のジャンル分けにも当てはまるのではないか。

 

ということで、あなたがヘヴィノベルだと思ったら、その作品はおそらくヘヴィノベルなんだろう。多分……

グレンラガンの序盤でカミナの兄貴も言ってたじゃないか。「お前が信じる、お前を信じろ!」──これが、ライトノベルとヘヴィノベルの基準なのだ。

 

で、目下わたしがどハマりしている『86-エイティシックス-』は、どっちなんだと言うと……

 

紛うことなき、ヘヴィノベルですわ‼︎ 完全無欠、正真正銘にヘヴィメタル‼︎ あ、いや、ヘヴィノベル‼︎‼︎

こういうゴリゴリなストーリーが、ずっと読みたかったのよ‼︎‼︎‼︎

 

とりあえず、一刻も早くアニメ化お願いしますm(_ _)m

作者の安里アサトさん。2巻目のあとがきで知ったんだけれど、元ネタはドイツ軍の88ミリ砲「アハト・アハト」なのね。でもって、「86」には英語のスラングで「好ましからぬ客を拒む」という意味を持つらしい。とりあえず、最新刊である7巻まで一挙に読みたいと思います。

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